病院・薬局実務実習調整機構

1.設立の経緯
薬学教育は化学に重点が置かれていましたが、医療法の改正や薬剤師に対する社会的ニーズの変化などから、医療現場で活躍する薬剤師養成に重点が置かれるようになりました。そのため、全国の薬科大学および薬学部は薬学生の病院および薬局での実務実習を必修化するようになりました。しかし、学生を受け入れる病院および薬局側からは、大学間に実務実習の事前教育などに差異があることが指摘されました。
 平成に入り、いくつかの地域で近隣の大学と医療機関が薬学生の実務実習を円滑に進めるために事前教育の均一化、実習テキストの統一、実習実施期間の統一、調整機構を介した実習先病院および薬局への割振手順などについて話し合う調整機構(または協議会)を立ち上げました。
薬学教育の指針を提言してきた薬学教育協議会は、調整機構を介した実務実習の意義を高く評価し、その実現を妨げている様々な問題を解決すべく検討するために、「薬学部学生の長期病院・薬局実習のための調整機構に関する専門委員会」を立ち上げ、同委員会は平成10年に、病院・薬局実務実習について答申しました。答申の要旨は以下の通りです。

「実務実習は特別実習(卒業研究)と同等であり、必修科目として4週間(20日間)程度実施すべきである。」
「全国を8ブロックに分け、各地区に地区調整機構を設け、当該地域に最も相応しい手続き・規模の実務実習を行う。また、中央調整機構を設け、全国規模で均一な実習を実施(最終的な目標)する。」

これを受けて、薬学教育協議会は実務実習を円滑に進めるための「病院・薬局実務実習中央調整機構」と全国8地区(下表参照)に分けた「病院・薬局実務実習地区調整機構」を設置して、その活動を支援してきました。

北海道地区  北海道
東北地区   青森県、秋田県、山形県、岩手県、宮城県、福島県
関東地区   茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県
北陸地区   富山県、石川県、福井県
東海地区   静岡県、愛知県、岐阜県、三重県
近畿地区   滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
中国・四国地区 鳥取県、島根県、岡山県、広島県、徳島県、愛媛県、香川県、高知県
九州・山口地区 山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、宮崎県、熊本県、鹿児島県、沖縄県

2.薬学6年制実務実習開始へ向けて
平成16年には学校教育法の一部が改正されて、薬学教育6年制化と長期間の実務実習が義務付けられたのを機会に、病院・薬局実務実習調整機構は6年制実務実習を円滑に進めるために以下の事項を合意しました。

合 意 事 項

各地区が、当該地区に最も相応しい手続き・規模などを定めて実務実習を実施することを基本とする。
病院および薬局での実習期間をそれぞれ2.5ヶ月とする(後にそれぞれ11週間に変更)。
実習時期は、5年次に実施することを標準とし、各大学は5~7月(第Ⅰ期)、9~11月(第Ⅱ期)または1~3月(第Ⅲ期)の何れかを選んで行う。なお、当該期間中は原則として連続して実習を行う。
地区調整機構は、地区内の大学、都道府県薬剤師会および都道府県病院薬剤師会と連絡を密にとり、長期実務実習の円滑な実施に向けて努力する。
各地区調整機構は、手分けして地区内に所在する病院および薬局の経営者が長期実務実習のために薬学生を受け入れることを確認する。
地区内の大学経営者、都道府県病院薬剤師会長および都道府県薬剤師会会長の間で密接な交流ができるよう努力する。
大学教員を積極的に病院および薬局に赴かせて、医療現場について理解してもらうよう計らう。
実務家教員の実習現場での関わり合いについて、各地区で協議する。
実習先へ割り振りのシミュレーションを実施する。
平成18年4月入学者の実務実習実施場所・地域調査を行い、実習先への割り振りシミュレーションの資料とする。
できるだけ多くの薬局が実務実習を経験して6年制長期実務実習に備えるために、各大学は協力するよう要請する。
薬局実務実習の施設については、調整機構が調査した平成18年4月入学者が希望する実務実習実施地域に関する資料に基づき、平成19年末までに受入薬局を確保する。
薬学教育協議会理事長(当時の名称)は、国公立大学薬学部長(科長・学長)会議、日本私立薬科大学協会の代表者と共に病院団体へ薬学生の長期実習の説明および実習生受入要請のために訪問すること、必要に応じて文部科学省および厚生労働省の関係者にも同行を要請する。
各地区調整機構は地区内の病院および薬局の上部団体へ、各大学の学長・学部長が実習受入に係わる説明のために訪問し、その成果を協議会事務局へ報告する。なお、訪問に際しては必ず複数の大学代表で伺う。
薬学教育協議会に特別委員会として実務実習推進委員会を設置し、実務実習に係わる事項で調整機構が対応しない項目について検討する。
文部科学省通知(16文科高第1055号:平成17年3月31日)で提示された実務実習に係わる実習施設の総括(別様式1)、実習施設の概要(病院)(別様式2)、実習施設の概要(薬局)(別様式3)および薬学実務実習施設の調整実施承諾書(別様式4)について、調整機構がその作成に協力する。


各地区調整機構は、これらの合意事項を踏まえて、それぞれ地区の状況に応じた実務実習実施に向けて準備し、また、実習費の額など、実務実習開始までに解決しなければならない諸問題で病院・薬局実務実習調整機構が取り扱えない事項については「実務実習推進委員会」を薬学教育協議会内に設けて協議しました。
平成16年に学校教育法の一部が改正され、6か月間の実務実習必須化が公示さてから5年間、全国薬科大学・薬学部教員、各地区調整機構、日本薬剤師会および日本病院薬剤師会の必死の努力と文部科学省および厚生労働省のご尽力により平成22年5月17日に最初の6年制学生の実務実習をスタートすることが出来ました。

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